旅の話を徒然に書いていきたいと思います。旅行記は旅に出た時のみ更新、旅行にまつわるいろいろな情報(例えば今サンフランシスコ空港は セキュリティ・チェックが厳重だからすごく混んでるよ、など)は入り次第更新していきます。

旅の第三回はサンブルーノ・マウンテンです。 サンフランシスコの空港で飛行機から降りると夏だったら茶色の禿げ山、冬だったら緑の電波塔がつんつん突き出た 大きな丘が目の前にどーんとあります。それがサンブルーノ・マウンテン。山全体がハイキングやデイキャンプで手軽に楽しめる自然保護公園になっています。では、サンブルーノ山紀行へ出発。サンブルーノ写真集もあわせてご覧ください。


第三回 サンブルーノ・マウンテン

さて今回はしっとりした鎌倉とは がらっと変わって明るくアメリカンで。サンフランシスコ空港のとなり、サンブルーノ、サンフランシスコ、サンマテオの 3つの地区にまたがった大きな山塊がサンブルーノ・マウンテン。ここにはハイキング・トレイルが幾つかあり、今回は頂上をぐるっと 回ってくる約3マイルのサミットループ・トレイルを試してみた。単独コースとしては一番長いコースで二時間程で回れる。ちなみに山頂縦断のリッジ・トレイルは、長さ約2.5マイルでも起点が頂上なのでサミットループと合わせると約5.5マイル(4時間コース)になる。
サンブルーノ・マウンテンは大都市の傍らにありながら何種類かの希少種の昆虫、鳥類、植物の特別生息地になっていて、公園と 生態系の管理は州、郡、いくつかの自然保護団体の共同でがっちり行われている。自然保護団体はまじめな研究を 目的とした団体らしく、ヒステリックに政治的かつダブルスタンダードを平気でやらかす保護団体とは一線を画していて 好感持てるし、よし協力しようって気になるもんです。
今回は国籍混交(アメリカ、フィリピン、日本)の友人たちと一緒にお弁当持って出発。山塊は目の前、行くのに 車で10分とかからない。お墓の町コルマを抜けて コンドミニアムの横を右に曲がったらいきなり景色が「普通の住宅地」から「西部の峡谷」になる。あ、ちなみにコルマは町全体が巨大な西部の公園墓地です。かの有名なワイアット・アープのお墓もある。曲がり角から3分ほど走って駐車場に車を停めたらもうその横が登り口。入場料は5ドル、駐車料金はたしか無料。車から降りたアヤシイ一行はしばらく平坦な草原(この草原の何種類かの植物はこの山にしか存在しない希少種)を進んでユーカリの森の中へ。森の前で振り返ったらサンフランシスコがよく見えた。ウチの裏山までちゃーんと見えました。森に入ってまず目についたのが右写真のニワトコに似た赤い実がいっぱいなっている木。液果はきれいですね。

サンフランシスコ側から見た頂上。電波塔林立状態でよく目立つ。あそこが目的地です。
ちょっと登って振り返るとサンフランシスコの町がよく見えます。鉄塔はツインピークス。実は我が家の裏山もよく見えます。

森の中にはいってすぐ見つけたベリー。ニワトコに似てるけど、何だろう。

 
ブラックベリー。可愛いし美味しいけれど、ここではあらゆる所に強烈にはびこる雑草。
フランシスカン・ロック・クレス。希少種。
トゲウリとでも呼びたい変なヤツ。多分カラスウリと似た様なものだと思う。
木につい苔。霧が多いので色々な苔が木について不思議な景色を作ってます。
 

ユーカリの森の中はさっきのニワトコ似のベリーが至る所にあり、その他はブラックベリーの薮だらけ。ブラックベリーはこの近辺では強靭な刺を持つしつこい雑草、駆除出来ないやっかいな薮として扱われていて、道路の脇、手入れの悪い裏庭などあらゆる所にはびこる。実は甘酸っぱくてワイルドな香りもあるし結構美味しいし、森の中の野生ベリーはきれいで風情もあるんですけどね。頼むから住宅地の庭には侵入しないでくれ、お主。
低地の森を抜けたら低い薮と草と岩の景色になる。日本の山と違って背の高い木はほとんど無く、乾燥した風の強い土地で、雨期の雨と定期的に山を覆う霧に頼って生き延びられる植物が生息している。まさに昔習った「地中海性気候」そのもの。度々言うけれど、この地方にしか生息していない植物や昆虫がいて、名前もフランシスカン・ナントカやらサンブルーノ・ナントカと付いていたりする。その中の一つが左のピンクの可憐な花、フランシスカン・ロック・クレス。花の形も咲いている風情も一見カリフォルニアポピー風。高さは20センチに満たないし、花の直径は大きくても3センチ弱だけれど、枯草の中からピンクの花がふわりと浮かんで結構目立つ。
ゆっくりと写真を撮りながら登って行くと次に出会ったのが瓜の仲間の変なヤツ。トレイルを横切って伸びた蔓に、今は黄色だけれど熟れるときっと赤くなるんじゃないか、と思わせるトゲトゲのカラスウリの様な実が二つ下がっていた。蔓をたどって若い実も見つけたけれど、きれいな緑の実はやはりトゲトゲで、メロンのマスクの様に熟すとトゲが出ると言う訳でも無さそう。これは後でさんざん調べたのにどこにも載っていなかった謎の瓜。もしかしたらあまりに一般的な植物で野生種や希少種では無いのかもしれない‥‥けど、今まで見た事無いです、こんなもん。
頂上への道筋は結構うねうねと山ひだを巡って行くので、乾燥した風の強い所と風の弱い所を交互に通って行くことになる。風の強い所では地面にへばりついた植物と膝くらいまでの薮、弱い所は低木と肩の高さくらいの草。定期的に(3日〜5日)霧に覆われるため、風の弱い場所に生えている低木には苔がはりつき、それが成長して不思議な世界を作っている。もっと低地のクリスタル・スプリングスの周りだと苔は大木にはりついて枝から垂れ下がるくらいに成長するし、それも面白い眺めだけれど、ここでは密やかなる不思議世界を形成している。日本の高い山の上や北海道あたりの海岸と同じ様な気候だから、日本で言う高山植物の仲間が多い。ミヤマリンドウの仲間、ウスユキソウの仲間、コマクサの仲間。水不足、強風おまけに霧ばかりの厳しい気候でも植物界は結構にぎやかに過ごしてる。

 

さて1時間ほどで頂上の鉄塔の下に到着。この鉄塔は湾の反対のオークランド側から見るとサンフランシスコのランドマークであるツインピークスより遥かに目立つ。山塊が大きいせいもあるけれど、つんつん突き出た鉄塔は特に夕焼けを背景にしていると、山の後ろからゴジラでも出て来そうな不思議なインパクトがある。鉄塔が通信機器として機能していると言う事は、メンテも常にやっている訳で、自然の植物の間をゆっくりと登って来た我々が見たのは管理用の建物に続く広い大きな舗装道路。頂上は都会だった。ま、この道路はメンテ等の関係者のみ使用可ということで、下にゲートがあるらしい。頂上からは360度見渡せて、東はサンフランシスコの町、南を見下ろせば空港とサンフランシスコベイが見渡せ、西はデイリーシティとサンマテオの住宅地、北はパシフィカやサンセットや太平洋。天気がよければポイントレイエスに続くマリーンヘッドランズも見える。頂上で水を飲んでしばらく休息。ペットボトルの水は都市の中の公園でも絶対の必需品。日本の公園みたいに自動販売機が置いてあるなんてあり得ないし、水飲み場も無い。日本の観光地の環境や景観がゴミで悲惨になるのは公共心が無いだけでなく、そもそも自動販売機を安易に置くせいではないか。こちらの公園はみんなの財産。自分のゴミは持ち帰るからきれいなもんですよ。
頂上から少し降りたところで見つけたのがリンドウにそっくりな赤い花。インディアン・ペイントブラシという名前の西海岸全域に分布している花です。ところで、この山にいろいろな植物は多いけれど一番目についたのがヨモギの仲間。正しくはヤロウ(ノコギリソウ)だけれど白も黄色も、とにかく山ほどある。この花はサンフランシスコの花屋さんで上品に バラやガーベラと一緒に花束になってリボンで結んで売られているより、野生で群生している方が遥かにきれいに見える。ノコギリソウと言えば昔読んだ「ゲド戦記」にノコギリソウって名前の人が出てこなかったっけ?ジブリでアニメ化されたらしいですね。ともあれノコギリソウはカリフォルニア全土に分布しているので一般的で見つけ易い。ただし、見つけても決して折り取ったりしないこと。自然保護ってだけでなく、折ったら臭い。

頂上。太平洋の方向を向いて(空港と反対側)海を見ている国籍混交のアヤシイ一団。
インディアン・ペイントブラシ。風の強い斜面にへばりついて咲いてました。

ヤナギランにちょっと似てるピンクの花のつぼみと後ろは白いノコギリソウの群生。

 
こちらはマーガレットの群生。黄色いのはノコギリソウ。
植物の高さを見てください。この二人は普通の背丈、山全体を覆うのは背の低い薮と低木です
ご存知猫じゃらしになるエノコログサ。

何が楽しいって、やはり外で気持ち良くビール付きの昼ごはんが最高。昼酒は効く‥。

 

町で清楚な花束になって売られている可憐な白いマーガレットもこの山の草地ではワイルドな本性を発揮して断然広がったらしい。山を下りて行く途中で広い草地の横を通ったら、見渡す限りマーガレットとノコギリソウ。赤い実をたくさんつけて点在しているのは下で見たのと同じニワトコ似の木。ここは昔牧場だったんだなあ、そういえば‥‥と思う。サンブルーノ・マウンテンは昔々、まだ白人アメリカ人が西部の端っこであるサンフランシスコに到達したり、カリフォルニアがメキシコ領からアメリカになる遥か以前、コストノアンという元祖アメリカ人の部族が住んで、狩りで獲物を獲ったり目の前のサンフランシスコ湾で漁をしたり、豊富な植物を採集して暮らしていたらしい。その後コストノアンが追い出され、白人たちはこの山を牧場として使っていた(一部は鉱物採掘場になっていた‥‥今も跡地がそのままある)ので、山の中腹にぽつぽつとあるこんな草原には牛や羊が群れていたらしい。山の空港側は鉱物採掘で削られて醜い状態になっているけれど、牧場跡はのどか‥‥と言ってもこの辺は以前ハンティングフィールドで雉子やウズラを撃ったらしい。今は北のメンドシーノとシエラの山の中にハンティングフィールドを設けている。
さて山から下りて来たら欲しい物は何はともあれビール、そして昼飯。丈の低い薮の間の道を駆け足で通りぬけ、通称猫じゃらし、本名エノコログサの草原を抜け、車に辿り着いたアヤシイ一団はクーラーボックスを車のトランクから引っ張りだしてユーカリの木に囲まれたデイキャンプ場へ。ここで早速ビールを瓶からラッパ飲み。これはうまいです。とにかく2時間歩いて水分とエネルギーが枯渇状態にあった我々はビールと分厚いサンドイッチにかぶりついた。極楽です。
宣伝する訳でもないけれど、もう一回言います。アメリカの公園、国立、州立、郡立、市立を問わず、その管理運営はハイレベル。金が取れるか取れないかではなく、自然は市民の財産だ、という一本ばしっと通った気概が感じられる。市民の財産だから変に人工的な手を加えて変質させない、汚さない、違反者からは高額の罰金を有無を言わせず徴収する、希少生物は徹底的に守ろうとする。ここに個人的な利権とからんだ金勘定や政治的トリックや「人ものは汚しても良い。私らお客さんだし、どうせここの国民じゃないしこの国には恨みもあるし」などの傲慢かつ低レベルな意識の入り込む隙がない(カリフォルニアにはかなりの数の外国人ー不法滞在者も含めてーがいる)。管理者、支援者、客を問わず個人の意識が高くないと公園のこのレベルは守れません。サンブルーノ・マウンテンは公園の規模としたら本当に小さい公園で、住宅地の端っこにある自然公園でしかない。管理している郡の予算は乏しいし、保護団体もここだけに予算を割ける訳じゃない。公園管理はこの自然公園を管理運営利用する人の意識の高さで成り立っていると言える。良いものは見習うべしが最後にわたくし春海坊が言いたい一言です。

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