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第四回 夏のファーマーズ・マーケット(春海坊のサンフランシスコ雑記帳)写真をクリックすると大きくなります。

夏です。いくらサンフランシスコの夏が寒いとは言っても、一歩町の外に出れば夏はやはり暑い。寒いのはサンフランシスコだけで、町から30分も車で行けばからっと晴れて暑い。湿度が低いので蒸し暑さは感じないけれど、もし水無しで半日外にいたら間違いなく死ぬんじゃないかと思う。夏休みにサンフランシスコに観光に来て、ナパやソノマに行く方は水携帯を絶対に忘れないでください。水を飲まないと危険です。

さて、夏のファーマーズ・マーケット。今回もまたアルマニー・ストリートのマーケットへ。ファーマーズ・マーケットはサンフランシスコ市内ではフェリー・プラザ、市庁舎前、そしてこのアルマニーが有名。一番オシャレなフェリープラザが火木土日、市庁舎前が水曜と日曜、実用的なアルマニーが土曜の朝。ファーマーズの人たちが店を開けるのは6時過ぎで、その頃は一般客はあまり来ない。大口の仕入れが必要なレストランの人などが、野菜や果物、卵などを大箱単位で買って行く。一般客が姿を見せるのはだいたい8時頃、全ての店が揃った頃から。
どの商店街でも同じだけれど、ファーマーズ・マーケットでも長く通っていると行きつけの店や買い物する順番が決まって来る。まず車を店の並びに出来るだけ近い所に停める。マーケットの真ん中、店の並びの中心に停めるのが理想的。買い物スタイルも実用的なのが一番なので、頑丈なズックの大きな袋を持って行く。

 

オーガニックのジャムの店。隣はジャガイモだけを売っている店。最近オーガニックが増えた。

卵屋さん。いつもウズラの卵はここで買う。ここは「ばるっ」も置いている。

どこの国でもおばちゃんは元気。試食した人はたいがい買って行く。
きのこ、きのこ、きのこ。椎茸やオイスターマッシュルーム、ポルチーニやシャンタレル!
これはズッキーニとズッキーニの花。花にタマネギやひき肉を詰めてフリッターにする。
 

スタイルと言えば籐の籠に購入したオリーブオイル、果物少しと花入れて、片手にエスプレッソの紙カップ、ファッションばっちり、化粧ばっちり、彼氏に加えてワンコ連れ‥フォトジェニックで素敵だね、でも店先で彼氏と話し込んで邪魔者扱いされるのがこのタイプ。売り子のおばちゃんはグズグズしてたら商売にならないから「何買うのか早く決めとくれっ!終わったんならそこどいてっ!」と殺気立ってるし、安くて良い野菜や果物を急いで買いたい中国人のおばちゃん団体に押しのけられる。 おばちゃんたちに負けずにさっさと買い物するには実用スタイルが一番。特に女性はスニーカーかペタンコ靴が鉄則。ハイヒールで果物の皮など踏んで滑ったら本気で危ない。下はコンクリートだし、混んでる上に小さい子供も多いし。

まずチェックするのは卵屋さん。ここは普通の白い鶏卵、放し飼い鶏の有精卵、アヒルの卵、うずらの卵、ピータン、シェンタンの他「ばるっ」まで置いている。「ばるっ」は孵化する直前の卵。10時過ぎに行くとウズラの卵も放し飼いの鶏の卵も売り切れてるから結構人気があるらしい。割れ易い卵やメロンの様な重い物はすぐ車に入れて身軽に次の店へ。車にクーラーボックスを常備していると便利。

次はキノコ屋さん。アメリカ人は缶詰マッシュルームしか食べないなんて嘘もいいところ。特にサンフランシスコではワインの産地は近いわ、イタリア系は多いわ、南米やアジアのエスニック料理は普通にあるわで目も舌も普通のアメリカ人とは段違いに肥えてる。確かに別の州から車でカリフォルニアに入った途端に料理の味が断然良くなるのを経験しているから、カリフォルニアのアメリカ人は多分特別なのだ。キノコ屋さんの店には白や茶色の普通のボタンマッシュルームやオイスターマッシュルーム、しめじ、椎茸、巨大なポートベラは一年中あるし、季節によって新鮮なシャンタレル、ポルチーニ、山伏茸(ライオンのたてがみと呼ぶ)などの高級キノコや松茸も出る。ここで買うのはつつましく椎茸。ごくたまに他のキノコを買うけれど、高いから少量買って珍重して食べる。とても美味しい。
キノコ屋さんからのアドバイス:キノコは絶対にプラスチック袋には入れないで、茶色い紙袋(ランチバッグの様な)に入れて冷蔵庫で野菜とは分けてで保管すること。もし乾燥してしまったらぬるま湯でゆっくり戻せばいい。


ファーマーズ・マーケットは基本的に旬の野菜、その季節にしか穫れない野菜や果物を置いているけれど、その中でも2週間行かなかったらお目にかかれないのがズッキーニの花。10センチほどの小さズッキーニに、しぼんではいても新鮮な花がついているものを選ぶ。花がやぶれたり、中が蟻の餌食になっていないか調べて買う。この花にひき肉と刻んだタマネギを詰めて天ぷらの様なフリッターにすると目先が変わっていて美味しい。

アルマニー・ストリートのファーマーズ・マーケットにはアジアの野菜が多い。アジア人の人口が多いせいで需要と供給がちゃんとバランス良く成り立っている。ここに来れば見慣れた野菜、懐かしい野菜もちゃんと手に入る。珍しい野菜や高価なグルメ食材も良いけれど、白瓜やししとう、春菊や枝豆に出会うとつい手が伸びる。ハーブの店にタイベイジルやレモングラス、コブミカンの葉があるだけでも嬉しいのに、束の青紫蘇まで売っているし、京菜やサトイモの子芋もある。

ジャパンタウンの大きなスーパーでは時々梅酒用の青梅が出たり、松茸が並んだりするけれど基本的に高い上、野菜が工場生産品みたいに小さくパックされていて魅力が無い。日本への郷愁とアクセスの良さを取るか、季節のエクサイトメントを取るかと聞かれたらファーマーズ・マーケットで季節と出会うエクサイトメントを取る方がいい。スーパーで年中売っているキャベツやアスパラガス、ブロッコリなどもここでは季節もの。美味しいキャベツ、特に葉が縮緬になったサヴォイ・キャベツは春先だけだし、アスパラガスは4月までしか売っていないし、ブロッコリは冬にならないと出回らない。絹さや、スナップエンドウ、空豆は初夏の頃に大量に売られ、その後は姿を消す。皆心得ていて、ここでは常連のお客と売り手の間の「そろそろ空豆だね」「察しがいいね、来週入るよ」などの農業カレンダー的会話が普通になり立っている。

果物も1年サイクルで見ると面白い。春先には大きなポメロとネーブルオレンジなどの柑橘系、暖かくなるとイチゴやラズベリー、初夏はサクランボ、桃、プラム、ネクタリンが出て来る。盛夏はメロンやスイカ、ブドウ。秋は梨や色の濃いブドウ、柿、リンゴ、栗、サツマみかんが出始めたらもう冬。次の年も同じサイクルで出回る。季節に沿った本来の果物の姿が見えて来て、農業国アメリカの季節のイベントと作物の関係に納得する。
例えば、毎年7月4日の前の土曜日に野菜を商う店は皮つきトウモロコシに占領される。当日は家族や友達が集まって午後は庭でバーベキュー。皮ごと塩水に浸けておいたトウモロコシをそのままバーベキューグリルの上で焼く。焼けたら「あち、あちち‥」と言いつつ皮をむいてバターを落として食べる。ジャガイモは美味しい大きなジャガイモがどこのスーパーでも買えるからわざわざファーマーズでは買わないけれど、オレンジは15キロの大袋で買っていく。サンクスギビングの前はレーズンやクランベリー、殻付きの胡桃やアーモンド、りんご、タマネギ、かぼちゃ等の冬に備えた滋味のあるものを売っているから、ターキーに詰めて焼いたりパイにしたりする。ちなみにターキーに普通の詰め物でなく、果物を入れると美味しく焼けるそうだ。

買った野菜やハーブを車に一旦入れて次のラウンドへ。次のラウンドは生鮮食料品以外のもの。ここ数年でかなり色々な種類の店が出るようになった。

 

若いヘチマや茄子や瓜。炒め物にする。何故かここだけアジアの街角風。

タイベイジル、トウガラシ各種、コールラビイ、きゅうり各種。レモングラスもあった。
季節ごとに種類を限定して売る果物屋さん。この季節は桃とネクタリン一色になる。

なんか、お祭りみたいだね。パン、ペイストリー、ジャム、チーズの屋台が並んでる。


大人は買い物、子供はこっちの方が魅力的.マリオネット演奏の楽士さん。
はちみつ屋さんの店先。近郊ワイルドフラワーの蜂蜜。農場はハーフムーンベイの近くで、この蜂蜜で花粉症を撃退するという人もいる。
行列ができるパン屋さん。甘いメキシカンロールとサワードウブレッドが美味しい。
 

パンとペイストリーの店、手作りジャム、インドのサモサとナンを売る店、オリーブオイルやチーズ店の他、ポプコーンの屋台まで出店した。アルマニー・マーケットが始まった頃からここで商いをしているという蜂蜜屋さんによると、ここで皆「良い食材を売るまじめな商売」を守って、30年間きちんとやって来たそうだ。最近市が場所代を連続で数回値上げし、結果、良心的な店のいくつかは閉店を余儀なくされた。姿を消した店に代って流行のオシャレモノを売る別の店が現れた様な気もしないではない。
一番新しいところではクレープ屋さんだけれど、大方の常連客は店が定着しないだろうと見ている。理由はまずクレープ平均9ドルなんて高すぎること。質実剛健なアルマニーの常連客に、値段もファッショナブルなクレープ屋さんは敬遠されるかも知れない。買い物の途中で何か一口欲しいという時には、入り口近くのメキシカンスナックの屋台でタコスとフレスカを買うか、真ん中の横断歩道の横にあるフードスタンドでコーヒーとドーナツかホットドッグを買って食べれば良いではないか、だいたいそんなダラダラした買い物してどうする、と言う事らしい。メキシカンの屋台は手頃な値段で味は良いし、水分が欲しい時にフレスカは重宝する。ホットドッグ屋台では1ドルのコーヒーしか買った事は無いが、冬の朝買い物で冷えきって温かいものが欲しい時には有難い。オシャレ屋さんではなく、蜂蜜屋さんの様な直球商売をする人こそ増えてくれなくちゃ困る。

ハーフムーンベイの近くで養蜂を営んでいるという蜂蜜屋さんは「ここらへんの花粉症なんぞ、ワイルドフラワーの蜂蜜を食べていれば治る」と言う。その土地の蜂蜜が花粉症に効くと確かに最近言われているが、その件はともかく蜂蜜は美味しい。初めて蜂蜜を買う人には簡単な蜂蜜についてのパンフレットをくれるから、読んでみると面白い。直球で商売する店をもうひとつ。3年前に開店したパン屋さん。ここはサンフランシスコ名物のサワードウブレッド、つまりパン種を使った酸味のあるパンや、バゲット、プリエーゼなどの皮の硬いパン、甘いメキシカンロール、さくさくして美味しいクロワッサンやブリオシュを売っている。早く行かないと長い列の後ろにつかなくてはならないから、パンを買う日は真っ先にこの店に来る。

買い物のしめくくりに花を買って家に帰ろう。大きな花屋さんが一軒、他に4〜5軒花を扱う店があり、一番新鮮で手頃な値段の花を見極めて買う。最近はダリアや金魚草、千日紅などの夏の花が多い。車に戻ったら運転中に転げ出さない様に野菜の袋を固定して、今週の買い物は終わり。野菜は約2週間で食べ切るから、次に来るのは2週間後。夏は駆け足で動いて行くので次回は野菜や果物の顔ぶれが変っているはず。楽しみです。

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