| 山門を入って方丈に向うと、満開の「大手鞠」が方丈の脇と枯山水の脇に一本ずつ。紫陽花を小振りにした様な緑がかった白い花だから地味な色なのに華やか。華やかなのに邪魔にならない。今の季節はそんな花が多い。紫陽花や菖蒲が咲く頃は庭園が一般開放さるが、庭園に入り込まずとも方丈でお茶をいただいて丸窓から緑の谷戸を眺めているだけでも庭園の美しさは堪能できる。
ところで時頼公の墓所は総門を入ってすぐの左側。茶室「月笑軒」の隣です。ちなみに茶室では抹茶と和菓子のセットが700円でいただけます。それにしても墓のすぐ脇には現代風の参拝者用トイレの建物、すぐ裏にそそり立つのは2階建ての民家の壁。時頼公は現代の土地のやりくり事情と建築センスを嘆いているかも知れない。「鎌倉の名執権」と呼ばれたこの人は「鉢の木」をはじめ伝説もまた多く、水戸黄門の諸国行脚の話は実は時頼公の話を取って来たものだった、とか。明月院を出たら浄智寺に立ち寄って一休み。雨が上がって晴れて来た。浄智寺は鎌倉五山第四位の名刹で独特の趣のあるお寺だ。総門から山門の佇まいはやわらかく風景にとけ込んで墨絵の如くに見え、庭から見るお寺の建物は藁屋根の鄙びた風情でほっとする。庭の白雲木に白い花が満開で、母子とおぼしき中年の婦人と老婦人が花びらを拾っていた。鎌倉生まれの自分にとって、鎌倉時代は遠いけれど近い。何と言ってもここでは鎌倉時代が今だに人の生活を支えているし、ひとびとの血の中に刻み込まれた鎌倉人の質実剛健DNAは時々活性化して、今風に流される事を拒む。拒んできたから八百年昔からの価値あるものがまだ残っていて人を魅きつける。
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