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第一回 湘南の箱入りお嬢を探して・・・(春海坊の湘南雑記帳)

湘南と言えばサーフィンやサザンオールスターズで有名だし、江ノ島・片瀬は江戸の昔から海と弁天様が売り物の観光地。今は夏になると海岸が人だらけになるけれど、他の季節はサーファーと釣り人だけの静かな海になります。静かな季節の海岸には「湘南のお嬢」の姿が似合う。平塚から片瀬西浜にかけての海岸線はゆるやかで、風が強い時は大変だけれどこの日はまあまあ。愛車の「チャリ2号」を引っ張ってまず辻堂海岸の波打ち際でちょっと気になる探し物開始。


個人的に気になって探したのはサルボウの貝殻です。辻堂海岸で昔はありふれた貝殻だったのに今やあまり見かけないし、潮が変ったのか、だいいち浜辺に貝殻がほとんど無い。茅ヶ崎海岸にはもっとあるのになあ?しばらく探してやっとサルボウ3個見つけました。波打ち際は普通騒がしいもので、砂の中からプツプツ泡や汐が吹いて、カニや貝が住んでいるのが判る。桑港のオーシャンビーチでも波がかぶると砂の中から飛び出して、波が退くとあわてて砂にもぐる『海洋性モグラ』とでも呼びたくなる変なやつがいたる所に居ます。生きている波打ち際は騒々しい程エネルギーに満ちている。最近の辻堂海岸は静かすぎて不気味ですね。

 

辻堂海岸でやっと見つけたサルボウ3個。見かけはお寿司で有名なアカガイと似ている。穴が開いているものは、ヒトデか貝に食べられた跡。


湘南お嬢、桜貝。よくぞ生き残っていてくれました。名前の通り美しい色合いと、薄いデリケートな貝殻を持つ。一番大きい貝は左右3cm弱。中央の桜貝はヒトデかツメタガイに食べられている。
桜貝は湘南だけでは無く、日本各地に生息しているけれど、桜貝と『浜辺の歌』を湘南・鎌倉の象徴だと考えている人も多い。

さて「きれいな桜貝を飼いたいけど何処に行けば穫れますか」とい聞く人がいます。自分ひとりがチマチマと家で楽しむために海岸荒らして生きた桜貝を穫る、という浅薄な考えはやめていただきたい。桜貝は絶滅しかかっています。きれいな桜貝が好きなら、彼女達の生きている環境そのものを守っていただきたい。

 

辻堂海岸から引地川、鵠沼海岸を過ぎて片瀬西浜。以前の西浜の砂は極小の貝殻で出来ていたけれど、いつぞや大規模な工事をしてからはただの砂。東浜は江ノ島と腰越の間の波が穏やかな浜で、夏になるとここの人混みが必ずニュースで映し出される。さて、お嬢居るかな?あ、いましたぞ!足元に散っているピンクの貝殻、これが湘南の箱入りお嬢、桜貝です。桜貝を地元の人に見せると必ず「懐かしい」という答えが返って来る。古名は「花貝」。以前と比べると数は激減したけれど、よくぞ絶滅せずに生き残っていてくれました。昔は打ち上げられた貝殻が波打ち際に桜色の縞を作るくらい沢山あったけれど、今は注意深く探しながら歩けば見つかる程度。透き通った桜色の貝殻はごく薄くて、壊れない様にそっと紙に包んで持ち帰って来たのが左の写真です。桜貝は波が静かな砂浜の内湾の、しかも海の浄化能力がうまく働いている所でしか生きられないお嬢です。相模湾は波がおだやかで、特に東浜から三浦半島にかけての海岸線は、砂浜の内湾が多くて荒波からうまくブロックされている。まさしく桜貝は湘南の箱入りお嬢、会えてうれしい佳人でありました。


昔の片瀬・江ノ島はシラス干しと貝が名物で、弁天橋の上にいつもハマグリやサザエを売っている屋台が出ていました。竜宮城スタイルの小田急片瀬江ノ島駅から学校に向う通学路の途中に貝の作業場が二軒程あって、毎朝ハマグリを仕分けするカチカチという音が聞こえる中、友達と騒ぎながら学校に向って歩いた記憶もあります。ハマグリを二つぶつけて澄んだ音がすれば新鮮、鈍かったら死んだ貝だそうな。今は片瀬から腰越にかけての海岸通りには、素朴な貝工場やシラス干しの作業場が並ぶ代りに小綺麗なレストランやサーフショップが並び、海にはウィンドサーフィンの三角帆。若くて華やかなサーファーお嬢も悪く無いけど、今や絶滅しかかっている古風で淑やかな湘南の箱入りお嬢、桜貝が生きられる環境はきちんと守っていきたいものです。

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腰越漁港から見た江ノ島のシルエット。島の右に弁天橋。江ノ島灯台は新しくなって光も強くなったけれど昼間はどう見てもアイスクリーム・コーンが島の上に刺さっている様に見える。

桑港の海岸に住む『海洋性モグラ』の本名はパシフィック・モール・クラブ。正式名が「モグラ蟹」だったとは。皆同じ事を考えるらしい。