デザイントークのページにようこそ。ここはデザインの仕事で出会った色々なエピソードをご紹介いたします。ただし、進行中の仕事は常に極秘ですので、ご紹介するのは仕事が終了してある程度時間が経ち、もう既に公開され、商品として店頭に並んでからしばらく経ったデザインに関しての制作エピソードです。どうぞよろしく!(^^)

エピソード1:走れ!ミスター・コバヤシ!!


ソフト会社は早ければ数ヶ月単位で、売れ筋のソフトをアップグレードしています。ウイルス対策やバグの処理はダウンロードしたパッチを当てればいいけれど、新しいシステムに対応するためや、機能がぐんとグレードアップする時は本体のパッケージも新しいものになります。
私たちパッケージデザイン・チームがソフトウェア・パッケージの仕事をした時、クライアントさんからの要望は「今使っているパッケージのイメージを残しつつ、グレードアップされたソフトに相応しい洗練されたデザインを作ってほしい」ということでした。また、現行のパッケージはアメリカ国内の消費を考えて作られたものだけれど、新しいデザインは世界市場を視野に入れて作って欲しい、とも言われました。

新しいデザインと言っても、現行のパッケージから全くかけ離れたデザインを作る訳にはいきません。このプロジェクトの場合は、現行のパッケージに描かれた「走る男」のキャラクターは活かしてほしい、とクライアントさんからの要請がありましたが、オリジナルの「走る男」のイラストレーションは今見るといささか頼り無く見えます。このソフト開発当時の市場と時代に合っていたスタイルかも知れませんが、今は古くさく見えるので、パッケージ本体のデザインと同時進行でキャラクターも描き直し。
春海坊のスタイルで「走る男」を描くことになり、いくつか描いたうちの一つ、髪の色や服の色などで、いちばん東洋人っぽくなったヴァージョンが、チーム内で「ミスター・コバヤシ」と呼ばれ始めました。はじめミスター・ヤマモトと呼ぶ人もいたけれど、ほどなく「ミスター・コバヤシ」に定着。何でいきなりコバヤシとヤマモトなんだか判らないけれど「東洋人=黒髪=日本人=若いクールなビジネスマン=かっこいい」の連想だそうです。まったく、どこから出て来た発想なんだか・・・。さてプレゼンテーション。「ミスター・コバヤシ」もプリントアウトされ白ボードに貼られてクライアントさんのもとへ。プレゼンテーションは成功し「ミスター・コバヤシ」の呼び名も大いに受けて、春海坊のイラストレーションの採用決定になりました。

ネーミングは重要です。実際「ネーミング」と言うと商品の名前やマスコットの名前など消費者に対してのアピールを考えたケースが多いですが、デザインチームとクライアントの間で使われるだけの内輪のネーミングも結構重要で、プロジェクトをスムーズに進める鍵になったりします。キャラクターに名前が自然発生で(ブレーンストーミング等で名前を作るのではなく)付く、という事は、チームがプロジェクトに対して真剣で愛着を持ちしかも楽しんで仕事している証拠だし、デザイン・チーム内で呼ばれている名前を正式なクライアント・プレゼンテーションの場で「受ける事を予測して」使えるのは、クライアントとデザイン・チームがお互い信頼し合って連携がしっかりしている証拠です。

「ミスター・コバヤシ」は今Adobe Acrobat 6.0 のパッケージの上で走っています。 いつか又新しく誰かがこのパッケージをデザインし直す時まで、出来るだけ長い間走っていて欲しい・・・作者の願いです。

Adobe Acrobat 6.0 のパッケージ・デザインは 2003 American Graphic Design Awards を受賞しました。
詳しくはここをご覧ください。

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